危険物の性質(2)

ここからは第二類危険物についてまとめていきます。

  • 第二類危険物 可燃性固体

自分自身が酸化される物質であり自分自身が燃える性質を持ったものをここでは扱います。では以下に共通する性質をあげていきます

1)いずれの物質も可燃性の固体である

2)酸化されやすい(燃えやすい)物質であり燃焼速度が速い

3)酸化剤と混合や接触した上で衝撃などにより爆発する危険性がある

4)比較的低い温度での着火や引火がしやすい

5)自身が有毒である、または燃焼することで有毒ガスを発生するものがある

6)比重は殆どのものが1より大きく水に溶けない

7)粉末状のものは空気中で粉塵爆発を起こしやすい

こちらも以下に品名ごとにあげていきます。第一類危険物と同じように少しずつ覚えていきましょう。大きく分けて3種類です。

ここではリン(P)と硫黄(S)についてまとめていきます

リンは大きく分けて2つ、硫化リンと赤リンにわけて覚えていきましょう。

まず硫化リンはリンと硫黄が混合した化合物で化合の仕方により複数の化合物に分類されます。どの硫化リンも水と反応して硫化水素を発生させることを必ず覚えておきましょう。また燃焼すると有毒な亜硫酸ガス(二酸化硫黄)を発生させることも重要な特徴です。併せて覚えましょう

ここで3種類見ていきましょう。

1)三硫化リン、三硫化四リン(P₄S₃)

形状・性質・黄色の結晶
・水に溶けず二酸化炭素やベンゼンに溶ける
・比重が2.03で融点が172.5℃、発火点100℃
危険性・約100℃で発火の危険性がある
・摩擦熱、小炎によって発火の危険性がある
・燃焼すると有毒な亜硫酸ガスを発生する
・熱湯と反応して有毒で可燃性のある硫化水素を発生する。
火災予防法・発火の危険性があるため酸化剤や金属粉との混合を避ける
・火気、摩擦、衝撃や水分を避ける
・容器に収納して密閉する
・換気のよい冷暗所に保管する
消化方法・乾燥砂
・不燃性ガスで窒息消火を行う

硫化水素は無色の可燃性ガスであり卵が腐ったような異臭を放つ(腐卵臭)。この気体は空気より重く、低いところによくたまる性質があります。

2)五硫化リン、五硫化二リン(P₅S₂)

形状・性質・淡黄色の結晶
・二硫化炭素にとける
・水と反応して徐々に分解する
・比重が2.09あり融点は290.2℃
危険性・水と反応して有毒で可燃性のある硫化水素を発生する。
・燃焼すると有毒な亜硫酸ガスを発生する
火災予防法・発火の危険性があるため酸化剤や金属粉との混合を避ける
・火気、摩擦、衝撃や水分を避ける
・容器に収納して密閉する
・換気のよい冷暗所に保管する
消化方法・乾燥砂
・不燃性ガスで窒息消火を行う

3)七硫化リン、七硫化四リン(P₇S₄)

形状・性質・淡黄色の結晶
・二硫化炭素にわずかに溶ける
・水には徐々に反応し、熱水には速やかに反応して分解する
・比重は2.19、融点は310℃
危険性・水と反応して有毒で可燃性の硫化水素を発生させる
・燃焼すると有毒な亜硫酸ガスを発生する
・強い摩擦によって発火する危険性がある
火災予防法・発火の危険性があるため酸化剤や金属粉との混合を避ける
・火気、摩擦、衝撃や水分を避ける
・容器に収納して密閉する
・換気のよい冷暗所に保管する
消化方法・乾燥砂
・不燃性ガスで窒息消火を行う

赤リンはリンの同素体です。同素体というのはある同じ元素からなる単体のことを指し物質が異なるもののことです。リンの同素体には黄リンというものも存在します。単体であるので他の元素とは化合していません。マッチの先に使われている物質で比較的安定な物質であるので自然発火はしません。これが燃焼すると有毒なリン酸化物(五硫化二リン)が生じるので注意が必要です。

1)赤リン

形状・性質・赤褐色の粉末
・水にも二硫化炭素にも溶けない
・常圧(1気圧)では約400℃で消火する
・比重が2.2前後、融点が高圧で600℃であり発火点は260℃である
危険性・空気中で点火すると粉塵爆発を引き起こす危険性がある
・黄リンとの混合物は自然発火をする
・酸化剤と混合すると摩擦熱でも発火する
火災予防法・火気等に近づけない
・塩素酸塩類など酸化剤との混合を避ける
・容器に収容し、密閉して冷暗所に保管する
消化方法・注水

昇華は固体から液体を経ずに気体へと変化する状態変化の名称です。

自然発火は黄リンの性質であり赤リンが純粋な状態であるならば自然発火は起こりません。

硫黄は多くの化合物をつくる物質であり火薬やゴムなどの燃料として利用されます。また斜方硫黄、単斜硫黄、ゴム状硫黄の3種類の同素体が存在します。融点が低く燃焼の際に融解し流動するという特徴もありますのでここも覚えておきましょう。

1)硫黄

形状・性質・黄色の固体で無味無臭である
・水には溶けないが二硫化炭素には溶ける
・エタノール、ジエチルエーテル、ベンゼン
 などの有機溶媒にわずかに溶ける
・高温で多くの金属と反応して硫化物を作る
・約360度で発火し亜硫酸ガスを発生する
・比重1.8℃で融点が115℃
危険性・酸化剤と混合すると加熱、衝撃等で発火する危険性がある
・硫黄粉は空気中に飛散すると粉塵爆発を引き起こす危険性がある
・電気の不良導体であり摩擦によって静電気が発生しやすい
火災予防法・酸化剤との接触を避け、容器を密閉して貯蔵する
消化方法・水と土砂を組み合わせる

硫黄は融点が低く、燃焼の際に融解して流動する危険性があるため先に土砂で拡散を防ぎながら注水による消化を行うのが最も効果的な方法であるといえます。

ここからは粉末状の金属について見ていきましょう。

鉄粉は文字通り粉状になった鉄(Fe)です。よく目にする塊の鉄などの金属は熱伝導率が高く、熱が金属にたまりにくいため火災危険の恐れがないものとされています。しかし粉状になると空気(酸素)と接触する表面積が増加し、熱伝導率が低くなり熱がたまりやすくなるので非常に燃焼しやすくなります。このときに引き起こる爆発を粉塵爆発と言います。

粉塵爆発は常温の鉄粉の話になりますが高温となった鉄粉もまた爆発を引き起こします。高温の鉄粉に水を加えてしまうと水が一気に水蒸気に変化して爆発する水蒸気爆発を引き起こします。

危険物として指定される鉄粉には規定があり一定以上の大きさのものは危険でないものとして扱われます。鉄粉とは網の目の大きさが53μmの網ふるいにかけたときにかけた総量の半分以上が通過したもののことだけを言います。半分通過しなければ危険でないただの鉄というわけです。1μmは1mの1/1000000倍の長さを表します。肉眼では測定できないレベルの大きさです。

1)鉄

形状・性質・灰白色の金属結晶
・燃焼すると酸化鉄を発生する
・酸に溶けて水素を発生するが、アルカリには溶けない
・一般的に強磁性体である
・比重は7.9と重く融点は1535℃
危険性・加熱または火気との直接の接触により発火する危険性がある
・水分を含むと酸化蓄熱し発熱や発火をすることがある
・油が染みた切削くず等は発火の危険性がある
・酸化剤と混合したものは摩擦や加熱などにより発火しやすくなる
火災予防法・火気および加熱を避ける
・酸や酸化剤との接触を避ける
・湿気を避け、容器を密閉して貯蔵する
消化方法・乾燥砂
・膨張真珠岩(パーライト)

強磁性体は磁場の中に置くと強く磁気を帯びた状態になる物質のことを言います。

高温の微粉末に注水をするとその物質の表面積が大きいため水が一気に気化して爆発を起こしやすくなります。この爆発のことを水蒸気爆発といい加熱した鉄粉でもこれを引きおこす危険性があります。パーライトや乾燥砂はこういった物質の消火に適しており空気と水を遮断して消火する窒息消火という方法になります。

金属粉とは粉末状の金属のうちアルカリ金属、アルカリ土類金属、鉄、マグネシウムを含まない金属の粉を総称するものです。また大きさの指定も150μmの網ふるいを半分以上通過したもののことです。鉄粉だけふるいが細かいことは間違えないようにしましょう。こちらも半分以上通過していないものに関しては危険物とは見なされません。ただの金属という扱いです。数ある金属ですが特に重要なものはアルミニウムと亜鉛になります。見ていきましょう。

1)アルミニウム(粉)

形状・性質・銀白色の粉末
・酸、塩基、熱水と反応して水素を発生する
・時間はかかるが水と接触しても水素を発生する
・比重2.7であり融点は660℃
危険性・空気中の水分によって自然発火する危険性がある
・ハロゲン元素と接触すると自然発火することがある
・酸化剤と混合したものは加熱、衝撃などにより発火しやすい
火災予防法・火気を近づけない
・水分およびハロゲン元素との接触を避ける
・酸化剤との混合を避ける
・容器を密閉する
消化方法・金属火災用消火剤
・乾燥砂

酸とも塩基とも反応する元素のことを両性元素といいます。

2)亜鉛(粉)

形状・性質・灰青色の粉末
・空気中の水分や酸、アルカリと反応して水素を発生する
・硫黄と混合して加熱すると硫化亜鉛を生じる
・比重は7.1あり融点は907℃
危険性・空気中の水分によって自然発火する危険性がある
・ハロゲン元素と接触すると自然発火することがある
・酸化剤と混合したものは加熱、衝撃などにより発火しやすい
火災予防法・火気を近づけない
・水分およびハロゲン元素との接触を避ける
・酸化剤との混合を避ける
・容器を密閉する
消化方法・金属火災用消火剤
・乾燥砂

アルミニウム粉よりは危険性は少ない

最後にマグネシウムです。理科室で水との反応や燃焼で白い発光を見たことのある方が殆どであると思います。製造されてすぐのものは自然酸化による酸化皮膜が形成されておらずむき出しの状態にあるので発火しやすいという特徴があります。

粉として危険物に指定されるのは2mmの網ふるいを通過するものです。これは特にどの程度の割合で通過するとはありませんが2mmは肉眼で判断できる大きさです。見た目で塊であるなと判断できるものは危険物ではないという理解をしておいていいでしょう。

1)マグネシウム

形状・性質・銀白色の金属結晶
・酸とは反応するがアルカリとは反応しない
・常温の乾いた空気中では表面が薄い酸化皮膜で覆われるため酸化が進行しない
危険性・点火すると白光を放って激しく燃焼し酸化マグネシウムとなる
・空気中で吸湿すると発熱し、自然発火することがある
・酸化剤と混合すると衝撃などにより発火する
・希酸や熱水と速やかに反応して水素を発生させる。
・水と反応すると時間がかかるが水素を発生する
火災予防法・容器を密閉し火気を近づけない
・水分との接触を避ける
・酸化剤との混合を避ける
消化方法・金属火災用消火剤
・乾燥砂

引火性固体は固形アルコールその他1気圧(常圧)における引火点が4℃℃未満のものをいいます。これらは常温(20℃)で可燃性気体(可燃性蒸気)を発生し、引火の危険性のある物質です。実験などでなれている方は常温といわれると25℃(298K)を思い浮かべることもあるかもしれませんが規定されているのは20℃でした。ただ常温が何度かを問われることはないと思いますので特に気にすることはありません。

固形アルコールはアルコールを凝固剤で固めたもののことを言います。アルコールを圧縮凝固したもののことは指しません。また合成樹脂との化合物も固形アルコールに含まないので注意して覚えておきましょう。

引火性固体の特徴としてはこれ自身に直接発火する訳ではなく危険物より蒸発により発生した可燃性蒸気に引火するという点です。これが常温で可燃性蒸気を発生する訳ですから十分危険であるということがわかると思います。可燃性蒸気は引火性固体の蒸発による発生ですが熱分解による発生ではないことをよく注意して覚えておきましょう。

熱分解はその外部から加熱などによって熱を加えられることによっておこります。

引火性固体に該当する物品を以下に紹介していきます

1)固形アルコール

形状・性質・乳白色のゲル状固体
・メタノールまたはエタノールを凝固剤で固めたものでアルコールと
 同様の臭いがある
・密閉しないとアルコールが蒸発していく(昇華)
危険性・40℃未満で可燃性蒸気を発生するため常温(20℃)でも引火の危険性がある
火災予防法・火気、火花等との接近を避ける
・容器に密閉して貯蔵する
・換気のよい冷暗所に保管する
消化方法・泡
・二酸化炭素
・ハロゲン化物
・粉末消火剤

泡、二酸化炭素、ハロゲン化物での消火は前のページなどでも紹介した乾燥砂と同じく窒息消火と呼ばれる消火方法になります。常温で発火の恐れがあるため酸素を遮断する目的でこの消火方法が採用されています。

2)ゴムのり

形状・性質・ゲル状の固体
・生ゴムを主にベンジン等の石油系溶剤に溶かすことで作られる接着剤
・水に不溶
・直射日光により分解することがある
・粘着性が強く、凝集力も強い
・低温で引火する
危険性・引火点が10℃以下と常温より低く、可燃性蒸気を発生しやすい
・ゴムのりから出る可燃性蒸気を吸い込むと人体に影響が出ることがある
火災予防法・通気性のよい場所で使用する
・火気、火花等を近づけない
・容器を密閉し、直射日光を避ける
消化方法・泡
・二酸化炭素
・ハロゲン化物
・粉末消火剤

3)ラッカーパテ

形状・性質・ゲル状の固体
・トルエン、酢酸ブチルなどを原料とするラッカー系下地修正塗料
・引火点は10℃
危険性・引火点が低く常温で引火する危険性が大きい
・可燃性蒸気が滞留すると爆発を引き起こすことがある
・蒸気を吸い込むと人体に影響が出ることがある(有機溶剤中毒)
火災予防法・火気、スパーク、高温対のそばで使用しない
・容器は密閉し直射日光を避ける
・換気のよい場所で使用する
消化方法・泡
・二酸化炭素
・ハロゲン化物
・粉末消火剤

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