危険物の性質(3)

アルカリ金属として数えられている元素は6種類、アルカリ土類金属として数えられている元素は4種類が存在します。前のページでナトリウムとカリウムだけピックアップして紹介しているのはこれらが消防法で別の品名としてアルカリ金属と別に数えられているためです。なぜならこれらは反応性がナトリウムやカリウムより弱いためです。また禁水性ではあるが自然発火性はないという点が重要な特徴となってきます。

この2つをやるうえでは主に三種類が重要ですのでそこを見ていきましょう。

1)リチウム(Li)

形状・性質・銀白色の結晶であり柔らかい金属である
・固体金属の中で比熱が最も大きく、比重が最も小さい
・水と反応すると常温では徐々に反応し、高温では激しく反応
 して水素を発生させる
・ハロゲンと激しく反応しハロゲン化物を生じる
・深赤色の炎を出して燃え、酸化物を生じる
危険性・固体のものは融点以上に加熱すると発火する
・粉末状のものは常温でも発火することがある
火災予防法・水分との接触を避け、容器を密閉する
・火気、加熱を避ける
消火方法・乾燥砂

2)カルシウム(Ca)

形状・性質・銀白色の金属結晶
・空気中で加熱すると燃焼し、酸化カルシウムを生じる
・炎色反応は橙赤色
・水素と高温で反応し水素化カルシウムを生じる
・比重は1.6で融点は845℃
危険性・水と反応して水素を発生する
・粉末状にすると空気中で自然発火する危険性がある
火災予防法・水分との接触を避け、容器を密閉する
・火気、加熱を避ける
消火方法・乾燥砂

3)バリウム(Ba)

形状・性質・銀白色の金属結晶
・空気中では常温で表面が酸化する
・粉末状のものが空気と混合すると自然発火することがある
・炎色反応は黄緑色
。水素と反応して水素化バリウムを生じる
・ハロゲンと常温で反応しハロゲン化物を生じる
危険性・水と反応して水素を発生させる
火災予防法・水分との接触を避け、容器を密閉する
・火気、加熱を避ける
消火方法・乾燥砂

有機金属化合物は金属原子を含んだ有機化合物です。先に出てきたアルキルリチウムとアルキルアルミニウムは消防法にて独立の扱いをされています。一つ例をとってみてみましょう。

1)ジエチル亜鉛(C₂H₅)₂Zn

形状・性質・無色の液体
・ジエチルエーテル、ベンゼンなどの有機溶媒に溶ける
・比重は1.2で融点は-28℃とかなり低い
危険性・空気に触れると自然発火する
・水、アルコール、酸と激しく反応しエタンなどの可燃性のある
 炭化水素ガスを発生する
火災予防法・窒素などの不活性ガスの中で取り扱い、保存を行い空気や水との接触を避ける
消火方法・粉末消火剤

金属の水素化物は金属と水素の二元化合物です。これも二つ代表的なものを見ていきましょう。

1)水素化ナトリウム(NaH)

形状・性質・灰色の結晶
・高温になると水素とナトリウムに分解する
・乾燥した空気中や鉱油中では安定
・二酸化炭素やベンゼンには溶けない
・金属塩に対する還元性が強く、金属の酸化物や塩化物から金属を遊離する
・比重は1.4で融点は800℃である
危険性・湿った空気中で分解し、自然発火する
・水と激しく反応して水素を発生する
・酸化剤と混合すると発火する危険性がある
・有毒な物質である
火災予防法・水分、酸化剤との接触を避ける
・窒素などの不活性ガスを封入して瓶などで密閉して貯蔵する
消火方法・乾燥砂
鉱油は石油などの鉱物性の油の総称を言います。

2)水素化リチウム(LiH)

形状・性質・白色の結晶
・高温で水素とリチウムに分解する
・金属塩に対し強い還元性を示す
・有機溶媒に不溶である
・比重が0.82で融点は680℃ある
危険性・空気中の湿気により自然発火する
・水と激しく反応して水発生する発生する
・皮膚などに触れると強い刺激を起こし危険である
火災予防法・水分、酸化剤との接触を避ける
・窒素などの不活性ガスを封入して瓶などで密閉して貯蔵する
消火方法・乾燥砂

金属のリン化物はりんと金属元素との化合物との総称です。高温で分解するとりんを生じるものが多くアルカリ金属やアルカリ土類金属を含むリン化物は水との反応性が強いことが特徴です。よく覚えておきましょう。ここで代表例を一つ見ていきましょう

1)リン化カルシウム (Ca₃P₂)

形状・性質・暗赤色の塊状固体もしくは粉末
・加熱や水との反応でリン化水素を発生する
・弱酸と反応すると激しく反応しリン化水素を発生する
・アルカリには反応しないが酸との反応は激しい
・300℃以上の高温で酸素や硫黄と反応する
・比重は2.51で融点は1600℃
危険性・水や弱酸などと反応して生じるリン化水素は有毒な可燃性ガスである
・火災によって毒性、腐食性のあるガスを発生させる
火災予防法・水分、湿気を避けるために乾燥した場所に保管する
・湿気を避けるため地面より高いところに貯蔵する
・容器は密閉し、破損に注意する
・火気などに近づけない
消火方法・乾燥砂
リン化カルシウムの消火には乾燥砂以外の消火法が殆ど効果がないので要注意点です

カルシウム、アルミニウムの炭化物はカルシウム、アルミニウムと炭素原子がそれぞれ化合した化合物のことを言います。それぞれ重要な化合物ですので特に覚えておきましょう。

1)炭化カルシウム(CaC₂)

形状・性質・灰色または灰黒色の固体のものが多いが純粋なものは無色透明の結晶
・炭化カルシウム自身は不燃性であり吸湿性のある物質である
・高温で強い還元性を示し多くの酸化物を還元する
・水と反応して熱とアセチレンガスを発生し、水酸化カルシウムとなる
危険性・発生するアセチレンガスは可燃性、爆発性がある
・高温で窒素ガスを発生し石灰窒素を生成する
火災予防法・湿気のない乾燥した場所に貯蔵する
・容器は密閉し破損に注意する
・必要に応じて窒素などの不活性ガスを封入する
・火気などに近づけない
消火方法・粉末消火剤
・乾燥砂
消火に関して水を加えると反応してしまうため注水は厳禁です

2)炭化アルミニウム(Al₄C₃)

形状・性質・一般的には黄色であるが純粋なものは無色透明な結晶
・空気中では安定した物質である
・1400℃で分解し、メタンガスを発生する
・水と常温でも反応して発熱し、メタンガスを発生する
・比重は2.37で融点は約2200℃
危険性・発生するメタンガスに可燃性や爆発性がある
火災予防法・湿気のない乾燥した場所に貯蔵する
・容器は密閉し破損に注意する
・必要に応じて窒素などの不活性ガスを封入する
・火気などに近づけない
消火方法・粉末消火剤
・乾燥砂

政令により第三類危険物に指定されているものは塩素化ケイ素化合物です。これはケイ素と化合した物質が塩素化されたものの総称です。トリクロロシランが重要なのでこれを紹介していきます。

1)トリクロロシラン(SiHCl₃)

形状・性質・無色の液体
・有毒で揮発性が高く刺激臭がある
・水に溶けて加水分解し、塩化水素と水素を発生させる
・ベンゼン、ジエチルエーテル、二酸化炭素などに溶ける
・酸化剤と混合すると爆発的に反応する
危険性・揮発した蒸気が空気と混合して広い範囲で爆発性の高い混合ガスを形成する
・水または水蒸気と反応して発熱し、発火する危険性がある
火災予防法・水分や湿気に触れないように密閉して換気のよい場所に貯蔵する
・火気、酸化剤に近づけない
消火方法・乾燥砂
・パーライト

ここまでで第三類危険物をおわります。全六項目中半分がおわりです。お疲れさまでした。

後半3項目も頑張っていきましょう。

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