特殊引火物とは消防法の定めでは
ジエチルエーテル、二酸化炭素その他1気圧において発火点が100℃以下のもの、または引火点がー20℃以下で沸点が40℃以下のもの
という風になっています。
特殊引火物は引火点、発火点、沸点が第四類危険物の中で最も低く、燃焼効果(爆発範囲)が非常に広いことから第四類危険物の中で最も危険性の高い物品が集まっています。
それでは主な4つを見ていきましょう。
1)ジエチルエーテル(C₂H₅OC₂H₅)
形状・性質 | ・無色の液体で揮発しやすい ・特有の甘い刺激臭がある ・水にはわずかに溶け、エタノールにはよく溶ける ・比重は0.7で引火点が-45℃である |
危険性 | ・非常に引火しやすい ・蒸気は麻酔性を持つ ・静電気を発生しやすい ・空気と長時間接触したり日光に長時間さらされたりする と爆発性の過酸化物を発生し、加熱や摩擦が加わると爆発する危険性がある |
火災予防法 | ・火気に近づけない ・取り扱いや貯蔵は換気のよい場所で行う ・直射日光を避け、冷暗所に保管する ・容器を必ず密閉する ・沸点以上にならないように冷却装置などを使用して温度管理を行う |
消火方法 | ・泡消火剤 ・水溶性液体用泡 ・二酸化炭素 ・粉末消火剤 ・ハロゲン化物 |
2)二硫化炭素(CS₂)
形状・性質 | ・無色の液体 ・特有の不快臭 ・水に溶けないがエタノールやジエチルエーテルに溶ける ・比重は1.3で引火点は-30℃以下である |
危険性 | ・非常に引火しやすい ・静電気を発生しやすい ・揮発性があり、その蒸気は有毒である ・燃焼すると非常に有毒な亜硫酸ガスを発生させる |
火災予防法 | ・火気に近づけない ・取り扱いや貯蔵は換気のよい場所で行う ・水中で取り扱うなどして可燃性蒸気の発生を防ぐ |
消火方法 | ・水噴霧 ・泡 ・二酸化炭素 ・粉末消火剤 |
3)アセトアルデヒド(CH₃CHO)
形状・性質 | ・無色の液体 ・特有の刺激臭を持つ(果実のような臭い) ・水やエタノール、ジエチルエーテルによく溶ける ・油脂などをよく溶かす ・比重は1.5であり引火点は-39℃である。 |
危険性 | ・非常に揮発しやすく引火しやすい ・蒸気は粘膜を刺激するものであり有毒なものである ・熱や光でメタンと一酸化炭素に分解される ・加圧状態では揮発性の過酸化物を生じることがある |
火災予防法 | ・火気に近づけない ・取り扱いや貯蔵は換気のよい場所で行う ・直射日光を避け、冷暗所に保管する ・容器を必ず密閉する ・沸点以上にならないように冷却装置などを使用して温度管理を行う ・貯蔵するタンクは不活性ガスを封入する ・タンクは腐食しない鋼製とする |
消火方法 | ・二酸化炭素 ・ハロゲン化物 ・水噴霧 ・水溶性液体用泡 ・粉末消火剤 |
4)酸化プロピレン(CH₃CHOCH₂)
形状・性質 | ・無色の液体でエーテル臭がある ・水、エタノール、ジエチルエーテルによく溶ける ・比重は0.8で引火点は-37℃ |
危険性 | ・引火点が低く非常に引火しやすい ・蒸気に刺激性はないが体内に吸収すると有毒な物質 ・重合しやすいがそのときに発生する熱が火災の原因となり得る |
火災予防法 | ・火気に近づけない ・取り扱いや貯蔵は換気のよい場所で行う ・直射日光を避け、冷暗所に保管する ・容器を必ず密閉する ・沸点以上にならないように冷却装置などを使用して温度管理を行う ・貯蔵するときに不活性ガスを封入する |
消火方法 | ・二酸化炭素 ・ハロゲン化物 ・水噴霧 ・水溶性液体用泡 ・粉末消火剤 |
第四類危険物には石油類が1~4までの分類であります。このうち1~3類までは非水溶性と水溶性液体に分けられます。
水溶性液体は1気圧において温度20℃までの常温で同容量の純水と穏やかにかき混ぜた場合、流動が収まった後も混合液が均一な外観を維持するもののことをいいます。非水溶性液体は水溶性液体以外のものをいいます。
危険性は非水溶性液体>水溶性液体というようになりここ第一石油類の非水溶性液体ではガソリンが特に重要です。(基本的に油としてカウントされるものは非水溶性となります)
消防法では第一類危険物は以下のように定められています。
アセトン、ガソリンその他1気圧において引火点が21℃未満のものである
第一石油類に該当する物質を以下にまとめていきます。
1)ガソリン
形状・性質 | ・無色の液体であり揮発しやすい ・特有の臭いがある ・水に溶けない ・ゴム、油脂などを溶かす ・比重は0.7前後で引火点は-40℃以下 ・発火点は300℃と高い |
危険性 | ・非常に引火しやすい物質である ・電気の不良導体であり流動などで静電気が発生しやすい ・蒸気を過度に吸収すると有毒である |
火災予防法 | ・火気に近づけない ・火花を発生する機械器具などを使用しない ・静電気の蓄積を防ぐ ・蒸気を対流させないように通気の用場所に保管する ・容器を密閉して冷暗所に保管する ・河川などに流出しにくい場所で扱う |
消火方法 | ・泡 ・二酸化炭素 ・ハロゲン化物 ・粉末消火剤 |
ガソリンは無色の物質ですが他の物質、例えば灯油などとの間違いを防ぐために着色されていることがあります。
ガソリンは様々な用途を持つ物質で主に燃料として使われます。この用途によって自動車ガソリン、航空ガソリン、工業ガソリンの3種類にさらに分けられており消防法で危険物として定められているものは自動車ガソリンと工業ガソリンの2種類になります。工業ガソリンもさらに3種類に分けられており、分け方は主成分によってであり沸点範囲などではありません。
2)ベンゼン(C₆H₆)
形状・性質 | ・無色の液体であり特有の刺激臭を持つ ・揮発性を有し有毒な物質である ・様々な芳香族化合物の元となる物質であるが単体では 発がん性物質として知られている ・水には溶けないが多くの有機溶媒に溶ける ・ベンゼン自体も有機溶媒になり得る ・比重は0.9で引火点が-11℃ ・沸点が80℃とアルコール並 |
危険性 | ・引火しやすい ・電気の不良導体であり流動等によって静電気が発生しやすい ・毒性があり吸収すると中毒症状を引き起こす |
火災予防法 | ・固化したものでも引火性の危険がある ・火気に近づけない ・火花を発生する機械器具などを使用しない ・静電気の蓄積を防ぐ ・蒸気を対流させないように通気の用場所に保管する ・容器を密閉して冷暗所に保管する ・河川などに流出しにくい場所で扱う |
消火方法 | ・泡 ・二酸化炭素 ・ハロゲン化物 ・粉末消火剤 |
3)トルエン(C₆H₅CH₃)
形状・性質 | ・無色の液体で特有の刺激臭を持つ ・揮発性がある ・ベンゼンよりは弱いが毒性がある ・水には溶けないが有機溶媒には溶ける ・比重は0.9で引火点が4℃ ・融点が-95℃と低く固化したものはあまり見られない |
危険性 | ・引火しやすい ・電気の不良導体であり流動等により静電気が発生しやすい |
火災予防法 | ・火気に近づけない ・火花を発生する機械器具などを使用しない ・静電気の蓄積を防ぐ ・蒸気を対流させないように通気の用場所に保管する ・容器を密閉して冷暗所に保管する ・河川などに流出しにくい場所で扱う |
消火方法 | ・泡 ・二酸化炭素 ・ハロゲン化物 ・粉末消火剤 |
4)n-ヘキサン(C₆H₁₄)
形状・性質 | ・無色の液体でありかすかに特有の臭いを持つ ・水に溶けず有機溶媒に溶ける ・比重は0.7で引火点は-20℃以下と低い |
危険性 | ・非常に引火しやすい ・電気の不良導体であり流動等により静電気が発生しやすい |
火災予防法 | ・火気に近づけない ・火花を発生する機械器具などを使用しない ・静電気の蓄積を防ぐ ・蒸気を対流させないように通気の用場所に保管する ・容器を密閉して冷暗所に保管する ・河川などに流出しにくい場所で扱う |
消火方法 | ・泡 ・二酸化炭素 ・ハロゲン化物 ・粉末消火剤 |
5)酢酸エチル(CH₃COOC₂H₅)
形状・性質 | ・無色の液体であり特有の芳香を持つ ・水にはわずかに溶ける ・ほとんどの有機溶媒に溶ける ・比重が0.9で引火点は-4℃ |
危険性 | ・非常に引火しやすい ・電気の不良導体であり流動等により静電気が発生しやすい |
火災予防法 | ・火気に近づけない ・火花を発生する機械器具などを使用しない ・静電気の蓄積を防ぐ ・蒸気を対流させないように通気の用場所に保管する ・容器を密閉して冷暗所に保管する ・河川などに流出しにくい場所で扱う |
消火方法 | ・泡 ・二酸化炭素 ・ハロゲン化物 ・粉末消火剤 |
6)アセトン(CH₃COCH₃)
形状・性質 | ・無色透明な液体である ・揮発しやすく特有な臭気を持つ ・水によく溶ける ・油脂などの有機物をよく溶かすため有機溶媒として利用される ・アルコールやジエチルエーテルなどの有機溶媒にもよく溶ける ・比重は0.8で引火点が-20℃ |
危険性 | ・非常に引火しやすい ・静電気の花火で着火することがある |
火災予防法 | ・火気に近づけない ・貯蔵や取り扱い場所は通気性のよい場所で行う ・容器を密閉して通気のよい場所で行う |
消火方法 | ・水溶性液体泡 ・ハロゲン化物 ・二酸化炭素 ・粉末消火剤 ・水噴霧 |
7)ピリジン(C₅H₅N)
形状・性質 | ・無色の液体であり悪臭がある ・水にも有機溶媒にもよく溶ける ・溶解能力が高い物質であり多くの有機物を溶かす ・比重は0.98で引火点は20℃ |
危険性 | ・引火しやすく蒸気に毒性がある |
火災予防法 | ・火気に近づけない ・貯蔵や取り扱い場所は通気性のよい場所で行う ・容器を密閉して通気のよい場所で行う |
消火方法 | ・水溶性液体泡 ・ハロゲン化物 ・二酸化炭素 ・粉末消火剤 ・水噴霧 |
8)ジエチルアミン(C₂H₅)₂NH
形状・性質 | ・無色の液体でありアンモニア臭がある ・水にもアルコールにもよく溶ける ・比重は0.7であり引火点は-23℃と低い |
危険性 | ・引火しやすく蒸気に毒性がある |
火災予防法 | ・火気に近づけない ・貯蔵や取り扱い場所は通気性のよい場所で行う ・容器を密閉して通気のよい場所で行う |
消火方法 | ・水溶性液体泡 ・ハロゲン化物 ・二酸化炭素 ・粉末消火剤 ・水噴霧 |
ここではアルコール類の話になります。これも第一石油類に分類されまた重要な要素ですのでよく覚えていきましょう。
消防法でアルコールは次のように定められています
一分子を構成する炭素の原子が1~3までの飽和一価アルコールのことで総務省令で定めているものはこれに当てはまりません。また変性アルコールはこの危険物に含まれます。
アルコールとは炭化水素の水素原子がヒドロキシ基(ーOH)に置き換えられた形の化合物のことを言います。アルコールと呼ばれるものに炭素数の制限などはありませんが危険物としての縛りで炭素数が規定されています。また飽和一価アルコールというのは炭素間の結合が単結合のみで二重結合や三重結合がなく、またヒドロキシ基が1つだけのアルコールのことを言います。
総務省が提起している総務省令ではアルコールの含有量が60%未満の水溶液などをこの危険物のアルコール類から除くものと規定されています。
それではアルコール類と規定されている主な物品を紹介します。
1)メタノール(CH₃OH)
形状・性質 | ・無色の液体で特有の芳香を持つ ・揮発性を有し、有機物をよく溶かす ・水や多くの有機溶媒に溶ける ・比重は0.8であり引火点は11℃である |
危険性 | ・毒性がある ・引火しやすい ・炎がそこまで強くないので燃えていても認識しづらいことがある |
火災予防法 | ・火気に近づけない ・火花を発する機械器具等を使用しない ・通気性のよいところで扱う ・容器を密閉して冷暗所に保管する ・河川などに流出させないようにする |
消火方法 | ・耐アルコール泡 ・二酸化炭素 ・ハロゲン化物 ・粉末消火剤 |
2)エタノール、エチルアルコール(C₂H₅OH)
形状・性質 | ・無色の液体で特有の芳香と味がある ・揮発性を有し、有機物をよく溶かす ・水や多くの有機溶媒によく溶ける ・比重は0.8であり引火点は13℃ |
危険性 | ・毒性を持たないが麻酔姓がある ・引火しやすい ・炎がそこまで強くないので燃えていても認識しづらいことがある |
火災予防法 | ・火気に近づけない ・火花を発する機械器具等を使用しない ・通気性のよいところで扱う ・容器を密閉して冷暗所に保管する ・河川などに流出させないようにする |
消火方法 | ・耐アルコール泡 ・二酸化炭素 ・ハロゲン化物 ・粉末消火剤 |
メタノールやエタノールなどのアルコール類は構成する炭素数が増加するほど蒸気比重が大きくなっていき、沸点と引火点が高くなっていきます。これに伴い水溶性はどんどん低下していきます。
引火点が高いほど常温では安定な物質であるともいえるので燃焼などの危険性だけを見ると炭素数が1とカウントされるメタノールが危険性が高い物質であるといえます。
3)n-プロピルアルコール(C₃H₇OH)
形状・性質 | ・無色透明な液体である ・水、エタノール、ジエチルエーテルによく溶ける ・塩化カルシウムの冷飽和水溶液に溶けない ・比重は0.8で引火点は23℃である |
危険性 | ・毒性がある ・引火しやすい ・炎がそこまで強くないので燃えていても認識しづらいことがある |
火災予防法 | ・火気に近づけない ・火花を発する機械器具等を使用しない ・通気性のよいところで扱う ・容器を密閉して冷暗所に保管する ・河川などに流出させないようにする |
消火方法 | ・耐アルコール泡 ・二酸化炭素 ・ハロゲン化物 ・粉末消火剤 |
4)イソプロピルアルコール (CH₃)₂CHOH
形状・性質 | ・無色の液体であり特有の芳香を持つ ・水、エタノール、エーテルに溶ける ・比重は0.79で引火点は12℃ |
危険性 | ・毒性がある ・引火しやすい ・炎がそこまで強くないので燃えていても認識しづらいことがある |
火災予防法 | ・火気に近づけない ・火花を発する機械器具等を使用しない ・通気性のよいところで扱う ・容器を密閉して冷暗所に保管する ・河川などに流出させないようにする |
消火方法 | ・耐アルコール泡 ・二酸化炭素 ・ハロゲン化物 ・粉末消火剤 |
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