消防法では第2石油類は以下のように定められています。
灯油、軽油、その他1気圧において引火点が21℃以上70℃未満であるもの
第2石油類は引火点が常温(20℃)より高いため常温では引火しませんが加熱などによって液温が引火点以上になれば燃焼に十分必要な可燃性蒸気が発生するようになり点火源を与えると直ちに引火する危険性があります。
第2石油類も第1類と同じように水溶性液体と非水溶性液体に分けられます。
特に重要なものは非水溶性である灯油と軽油になります。灯油と軽油は共に原油から分流された混合物です。第2石油類のすべてが原油から分留されるというわけではありませんので間違えないようにしましょう。
それでは主だった品名を紹介していきます。
1)灯油
形状・性質 | ・無色またはやや黄色みのある液体 ・水に溶けない ・特有の石油臭がある ・油脂などを溶かす ・炭素数が11,12,13の炭化水素を主成分とする混合物 ・引火点は40℃以上で発火点は220℃、比重は0.8である |
危険性 | ・加熱等により液温が引火点以上になると引火の危険性はガソリンと同程度となる ・霧状になって浮遊したり、布などにしみこんだ状態では空気との 接触面積が広がり引火性の危険性が増加する ・電気の不良導体であるので流動等により静電気などが発生し、蓄積しやすい |
火災予防法 | ・火気に近づけない ・火花を発生させる機械器具等を使用しない ・蒸気の滞留を防ぐために換気のよい場所で取り扱う ・容器を密閉して冷暗所に保管する ・河川などに流出しないようにする ・静電気の蓄積を防ぐ |
消火方法 | ・泡 ・二酸化炭素 ・ハロゲン化物 ・粉末消火剤 |
2)軽油
形状・性質 | ・淡黄色か淡褐色の液体 ・特有の石油臭がある ・水に溶けない ・油脂などを溶かす ・比重が0.85で引火点は45℃以上である |
危険性 | ・加熱等により液温が引火点以上になると引火の危険性はガソリンと同程度となる ・霧状になって浮遊したり、布などにしみこんだ状態では空気との 接触面積が広がり引火性の危険性が増加する ・電気の不良導体であるので流動等により静電気などが発生し、蓄積しやすい |
火災予防法 | ・火気に近づけない ・火花を発生させる機械器具等を使用しない ・蒸気の滞留を防ぐために換気のよい場所で取り扱う ・容器を密閉して冷暗所に保管する ・河川などに流出しないようにする ・静電気の蓄積を防ぐ |
消火方法 | ・泡 ・二酸化炭素 ・ハロゲン化物 ・粉末消火剤 |
3)クロロベンゼン(C₆H₅Cl)
形状・性質 | ・無色透明な液体 ・特有の石油臭がある ・水に溶けない ・アルコールやジエチルエーテルに溶ける ・若干の麻酔性がある ・比重は1.1であり引火点は28℃である |
危険性 | ・加熱等により液温が引火点以上になると引火の危険性はガソリンと同程度となる ・霧状になって浮遊したり、布などにしみこんだ状態では空気との 接触面積が広がり引火性の危険性が増加する ・電気の不良導体であるので流動等により静電気などが発生し、蓄積しやすい |
火災予防法 | ・火気に近づけない ・火花を発生させる機械器具等を使用しない ・蒸気の滞留を防ぐために換気のよい場所で取り扱う ・容器を密閉して冷暗所に保管する ・河川などに流出しないようにする ・静電気の蓄積を防ぐ |
消火方法 | ・泡 ・二酸化炭素 ・ハロゲン化物 ・粉末消火剤 |
4)キシレン C₆H₄(CH₃)₂
形状・性質 | ・無色の液体である ・特有の芳香臭がある ・水には溶けないが有機溶媒には溶ける ・オルト、メタ、パラと呼ばれる3種類の異性体が有り多少の性質の違いがある |
危険性 | ・加熱等により液温が引火点以上になると引火の危険性はガソリンと同程度となる ・霧状になって浮遊したり、布などにしみこんだ状態では空気との 接触面積が広がり引火性の危険性が増加する ・電気の不良導体であるので流動等により静電気などが発生し、蓄積しやすい |
火災予防法 | ・火気に近づけない ・火花を発生させる機械器具等を使用しない ・蒸気の滞留を防ぐために換気のよい場所で取り扱う ・容器を密閉して冷暗所に保管する ・河川などに流出しないようにする ・静電気の蓄積を防ぐ |
消火方法 | ・泡 ・二酸化炭素 ・ハロゲン化物 ・粉末消火剤 |
5)酢酸、氷酢酸 (CH₃COOH)
形状・性質 | ・無色透明な液体である ・特有の刺激臭がある ・青い炎が垂れ下がるようにして燃える ・凝固点が16.7℃と常温に近く、凝固しやすい ・水、ベンゼン、エタノール、ジエチルエーテルなどによく溶ける ・水溶液が弱酸性を示し腐食性が強い ・比重は1.05で引火点は39℃である |
危険性 | ・金属やコンクリートを腐食する有機酸である ・皮膚も腐食し、やけどを起こす ・濃い蒸気を吸うと粘膜で炎症を起こす |
火災予防法 | ・火気に近づけない ・火気を発する機械器具等を近づけない ・通気性のよい場所で扱う ・容器を密閉して冷暗所に保管する ・河川などに流出させないようにする |
消火方法 | ・水溶性液体泡 ・耐アルコール泡 ・二酸化炭素 ・粉末消火剤 |
消防法では第3石油類は以下のように定められています
重油、クレオソート油その他1気圧において引火点が70℃以上200℃未満のもの
第3石油類は引火点が常温(20℃)より高いので加熱しない限り引火の危険性は小さくなるが、一度燃え始めると液温が高くなり燃焼温度が高いために消化が困難になるものが数多く存在します。
霧状になったものは液温が引火点より低くても引火する危険性があるために注意する必要があります。
第3石油類も水溶性液体と非水溶性液体に分けられます。この中で最も重要なものは重油であり非水溶性液体です。比重が1よりも大きく水に浮かないものが多いですが重油は水よりもやや軽いものになっています。名前で勘違いしないようにしましょう。
それでは重要な物品を紹介していきます。
1)重油
形状・性質 | ・褐色または暗褐色の粘性を持つ液体 ・水に溶けない ・揮発性が低い ・比重は1よりやや小さい程度であり引火点が60℃以上 |
危険性 | ・引火の危険性は殆ど加熱によるものであり加熱をしなければ燃えること はないが一度燃え出すと燃焼温度が高いために消化が困難である ・霧状になったものは引火点より低い温度でも引火する危険性がある ・分解重油の場合は自然発火の可能性がある ・不純物として硫黄が含まれるが燃えると有毒な二酸化硫黄を発生する |
火災予防法 | ・火気に近づけない ・容器を密閉して冷暗所に保管する |
消火方法 | ・泡 ・二酸化炭素 ・ハロゲン化物 ・粉末消火剤 |
2)クレオソート油
形状・性質 | ・黄色または暗緑色の液体 ・特異臭を持つ ・水に溶けない ・アルコール、ベンゼンなどに溶ける ・比重は1より大きく引火点は73℃以上 |
危険性 | ・引火の危険性は殆ど加熱によるものであり加熱をしなければ燃えること はないが一度燃え出すと燃焼温度が高いために消化が困難である ・霧状になったものは引火点より低い温度でも引火する危険性がある ・蒸気は有毒である |
火災予防法 | ・火気に近づけない ・容器を密閉して冷暗所に保管する |
消火方法 | ・泡 ・二酸化炭素 ・ハロゲン化物 ・粉末消火剤 |
3)アニリン(C₆H₅NH₂)
形状・性質 | ・無色または淡黄色の液体 ・光や空気の作用で褐色になっていることが多い ・特異臭を持つ ・水に溶けにくい ・エタノール、ジエチルエーテルなどの有機溶媒によく溶ける ・比重は1より大きく引火点は70℃ |
危険性 | ・引火の危険性は殆ど加熱によるものであり加熱をしなければ燃えること はないが一度燃え出すと燃焼温度が高いために消化が困難である ・霧状になったものは引火点より低い温度でも引火する危険性がある ・蒸気は有毒である |
火災予防法 | ・火気に近づけない ・容器を密閉して冷暗所に保管する |
消火方法 | ・泡 ・二酸化炭素 ・ハロゲン化物 ・粉末消火剤 |
4)ニトロベンゼン(C₆H₅NO₂)
形状・性質 | ・淡黄色または暗黄色の液体 ・芳香臭がある ・水に溶けにくい ・エタノール、ジエチルエーテルなどの有機溶媒に溶ける ・比重は1.2で引火点は88℃ |
危険性 | ・引火の危険性は殆ど加熱によるものであり加熱をしなければ燃えること はないが一度燃え出すと燃焼温度が高いために消化が困難である ・霧状になったものは引火点より低い温度でも引火する危険性がある ・蒸気は有毒である |
火災予防法 | ・火気に近づけない ・容器を密閉して冷暗所に保管する |
消火方法 | ・泡 ・二酸化炭素 ・ハロゲン化物 ・粉末消火剤 |
5)グリセリン C₃H₅(OH)₃
形状・性質 | ・無色無臭の粘性のある液体 ・甘みのある物質である ・水にもエタノールにも溶ける ・二酸化炭素、ガソリン、ベンゼンなどには溶けない ・吸湿性がある ・比重が1.1であり引火点は111℃である |
危険性 | ・ナトリウムと反応し水素を発生させる ・加熱しない限り引火の危険性は限りなく少ない |
火災予防法 | ・火気に近づけない ・容器を密閉する |
消火方法 | ・二酸化炭素 ・水溶性液体用泡 ・耐アルコール泡 ・ハロゲン化物 ・粉末消火剤 |
6)エチレングリコール C₂H₄(OH)₂
形状・性質 | ・無色無臭の粘性の大きい液体 ・甘みのある物質である ・水にもエタノールにも溶ける ・二酸化炭素、ガソリン、ベンゼンなどには溶けない ・吸湿性がある ・ニトログリセリンの原料である ・比重が1.3であり引火点は199℃である |
危険性 | ・ナトリウムと反応し水素を発生させる ・加熱しない限り引火の危険性は限りなく少ない |
火災予防法 | ・火気に近づけない ・容器を密閉する |
消火方法 | ・二酸化炭素 ・水溶性液体用泡 ・耐アルコール泡 ・ハロゲン化物 ・粉末消火剤 |
消防法では第4石油類は以下のように定められています
ギヤー油、シリンダー油その他1気圧において引火点が200℃以上250℃未満のもの
引火点が250℃以上のものは消防法の規制対象外です。
引火点が250℃を超えると着火の危険性が少なくかつ延焼の危険性が低いため規制対象から外されています。ただし市町村ごとに条例を別途定めている場合は可燃性液体類として別の規制の対象となっています。
第4石油類は引火点が非常に高く揮発性がほとんどないため加熱しない限り引火の危険が少ないが火災になると燃焼温度が非常に高いため消化が大変困難なものです。
多くの種類がありますが大きく分けて2つに分類されます
1)潤滑油
潤滑油は物体同士が接触するときに出る摩擦熱や摩耗を低減させるために用いられる油の総称です。
2)可塑剤
プラスチックやゴムなどに柔軟性を与えたり成形加工した利する場合に用いられる物質の総称を可塑剤と言います
細かく分類されるこの第四石油類ですが実は性質などは共通するものが多いので種類だけこういったものがあると頭に入れておくだけで大丈夫なものです。性質は以下の通りです
形状・性質 | ・粘性が大きい液体である ・常温では揮発しにくい物質である ・水には溶けない ・比重は1より大きく引火点は200℃以上である |
危険性 | ・発熱量が大きくまた引火点が高いため燃えだすと消化が困難である ・霧状にした場合は引火点より低い温度での発火の危険性もある |
火災予防法 | ・火器に近つけない ・冷暗所に保管する |
消火方法 | ・泡 ・二酸化炭素 ・ハロゲン化物 ・粉末消火剤 |
消防法では動植物油類は次のように定められています
動物の油肉等や植物の種子または果肉から抽出したものであって1気圧において引火点が250℃未満のもの
動植物油のような脂肪油には空気中の酸素と結びついて樹脂状に固まりやすい性質がありこれを油脂の固化といいます。空気中で固まりやすい(固化しやすい)脂肪油を乾性油、固まりにくいものを不乾性油、その中間の性質のものを半乾性油といいます。
脂肪油などの油脂には成分として脂肪酸が含まれており、このうち炭素原子間の結合が単結合であるものを飽和脂肪酸といいます。逆に二重結合、三重結合があるものを不飽和脂肪酸といいます。脂肪酸1分子に含まれている不飽和結合の数(二重結合や三重結合の数)のことを不飽和度と呼び、不飽和度が高いほど酸化反応が起きやすくなります。
不飽和部分では化学反応(付加反応)が起こりやすく空気中の酸素と結びついて酸化反応が進みます。
このときに発生する反応熱の蓄積により発火点に達すると自然発火が起こります。
不飽和脂肪酸を多く含む乾性油ほど酸化反応が起こりやすく、固化しやすく、また自然発火の危険性が高いという特徴があります。
動植物油も基本的な性質は共通するものが多く、違いが以下で説明するヨウ素価などになるのでここもまとめて覚えておきましょう
形状・性質 | ・淡黄色の液体である ・純粋なものは無色透明 ・物質中に不飽和脂肪酸を含む ・水に溶けない ・比重は0.9程度で引火点は200℃以上である |
危険性 | ・不飽和脂肪酸が多い乾性油になるほど酸化、発熱して自然発火を起こしやすくなる。 ・保存期間が長かったり重ねておかれたりしても自然発火の可能性がある ・発熱量が大きく引火点も高いので一度発火すると消化が困難になる |
火災予防法 | ・火器に近ずけない ・通気性の良い冷暗所に保管する |
消火方法 | ・泡 ・二酸化炭素 ・ハロゲン化物 ・粉末消火剤 |
不飽和度を調べる方法としてヨウ素を調べるという方法があります。ヨウ素はハロゲンとして数えられる元素でうがい薬などに使われている紫色の液体です。
このヨウ素は炭素の二重結合と非常に結びつきやすいため結びつく要素の量を調べることで不飽和度を特定できます。油脂100gに結び付くヨウ素の量をヨウ素価といいます。
ヨウ素価が高いということは不飽和度が高く、酸化されやすいために自然発火の危険性も高くなるということがわかります。先ほど紹介した乾性油や不乾性油の分け目はこのヨウ素価の違いによるものです。
乾性油 | 半乾性油 | 不乾性油 | |
ヨウ素価 | 130以上 | 100~130 | 100以下 |
不飽和度 | 高い | 中間 | 低い |
ここまでで第四類危険物が終わりです。量が多いですが重要なところですので頑張って覚えていきましょう。
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